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卓球コーチング

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【卓球コーチング】一度に教えすぎると覚えられない?|認知負荷理論を使った指導法

公開日
2026.11.04
更新日
2026.10.31

卓球を指導するとき、少しでも早く上達してほしいと思い、多くのことを一度に伝えてしまうことがあります。

「足を動かして」「肘を下げて」「打点を前にして」「ラケットをかぶせて」と続けて伝えても、選手がすべてを同時に意識できるとは限りません。

このような場面を考えるうえで参考になるのが「認知負荷理論」です。

認知負荷理論とは

認知負荷理論は、教育心理学者のジョン・スウェラーが中心となって発展させた学習理論です。

人が新しい情報を一時的に処理する「ワーキングメモリ」には限界があります。一度に扱う情報が多すぎると、理解や記憶が難しくなります。

一方で、学んだ知識や動きが長期記憶に蓄積されると、複数の情報を一つのまとまりとして扱えるようになります。

初心者には難しい動きでも、経験者があまり考えずにできるのは、これまで積み重ねてきた経験によって、動きが整理されているためです。

画像の説明

認知負荷には種類がある

現在の認知負荷理論では、主に次の2つに分けて考えます。

課題そのものから生じる負荷

技術や課題がもともと持っている難しさです。

卓球の試合では、ボールの回転、コース、速さ、相手の位置などを確認しながら、短時間で返球方法を選ばなければなりません。

同じ課題でも、初心者には負荷が大きく、経験者には小さくなることがあります。

教え方によって増える余計な負荷

説明が長い、指示が多い、見本と説明が一致していないなど、課題そのものとは別に生じる負荷です。

この負荷は、指導方法を工夫することで減らせます。

以前は「学習に役立つ負荷」を加えた3種類で説明されることもありましたが、現在は、課題そのものの負荷と余計な負荷を基本に整理する考え方が中心です。

卓球指導で起こりやすい教えすぎ

例えば、フォア打ちを始めたばかりの選手に、次の内容を一度に伝えたとします。

  • 足の位置
  • 肘の位置
  • ラケットの角度
  • 打球点
  • スイングの方向
  • 打った後の戻り

どれも大切ですが、すべてを同時に意識するのは難しいでしょう。

選手ができないのは、説明を聞いていないからとは限りません。情報が多すぎて処理しきれていない可能性もあります。

指導者と初心者では見えているものが違う

指導者は、長年の練習によって、足の動きやラケットの角度、打球点などをある程度無意識に調整できることが多いと思います。

しかし、それは最初から簡単にできたのではなく、これまでの積み重ねによって、一つひとつ考えなくても動けるようになった状態です。

その感覚のまま初心者を見ると、「なぜこんな簡単なことができないのか」と感じてしまうことがあります。

指導者にとって簡単な動きでも、初心者は複数の情報を同時に処理している可能性があります。

指導者の現在の感覚を基準にするのではなく、選手が今どこまで理解し、何を意識しているのかを確認し、目線を揃えることが大切です。

一度に意識する内容を絞る

各々の課題にもよりますが、初心者には一度に一つか二つのポイントを伝えます。

例えば、次のように段階を分けます。

  1. ボールに合わせてラケットを出す
  2. 安定したら打球点を意識する
  3. 次に足の位置や動きを加える
  4. 最後に打球後の戻りまでつなげる

すべてを細かく説明してから始めるのではなく、実際に打ちながら必要な情報を少しずつ加えます。

すでにできている部分まで何度も指示せず、今の選手にとって優先度の高い課題に絞ることも必要です。

説明を短くして見本を見せる

長い説明だけで動きを理解するのは簡単ではありません。

「打点を前にする」と短く伝え、実際の動きを見せることで、選手が意識する内容を絞りやすくなります。

ただし、見本を見せる場合も、確認してほしい部分を明確にします。

「全部見て」ではなく、「ボールを打つ位置を見て」と伝えた方が、注目する場所が分かりやすくなります。

練習の難易度を段階的に上げる

最初から実戦に近い練習をすると、回転、コース、判断、動作を同時に処理しなければなりません。

例えば、次の順番で難易度を上げます。

  1. 同じ場所へ送られるボールを打つ
  2. 2か所へ送られるボールを打つ
  3. ランダムなボールに反応する
  4. サービスから得点を競う

基本動作に慣れてから判断の要素を加えることで、負荷を調整できます。

経験者には教えすぎない

初心者に役立つ細かな説明が、経験者にも役立つとは限りません。

すでに無意識にできている動きを細かく意識させると、かえって動きにくくなる場合があります。

経験者には、動作を一つずつ説明するよりも、「相手のバック側へ集める」「打球後に次のボールを予測する」など、目的や戦術を伝えた方がよいことがあります。

選手の経験や現在の課題に合わせて、説明する量を変える必要があります。

負荷をすべて減らせばよいわけではない

認知負荷理論は、簡単な練習だけを行うという考え方ではありません。

試合では、多くの情報から判断する力が必要です。そのため、基本動作が安定したら、コースや回転を変え、考える要素を増やしていきます。

大切なのは、負荷をなくすことではなく、現在の選手が取り組める難易度に調整することです。

指導者が確認したいポイント

選手がうまくできないときは、次の点を確認します。

  • 一度に多くのことを伝えていないか
  • 説明が長くなっていないか
  • 何を意識するか明確になっているか
  • 指導者と選手の目線が揃っているか
  • 選手の経験に対して課題が難しすぎないか
  • 基本動作と判断を同時に求めすぎていないか

できない原因を本人の集中力や意欲だけに求めず、指示の量や練習の難易度を見直すことも必要です。

まとめ

認知負荷理論では、人が一度に処理できる情報には限界があると考えます。

指導者が簡単だと感じる動きも、初心者にとっては複数のことを同時に処理する難しい課題かもしれません。

一度に意識する内容を絞る、短い言葉と見本を組み合わせる、練習の難易度を段階的に上げるなど、選手の現在地に目線を合わせた指導が大切です。

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