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【卓球コーチング】成長マインドセットとは?能力の捉え方と指導での活用法

公開日
2026.11.03
更新日
2026.10.31

成長マインドセットとは?

成長マインドセット(Growth Mindset)とは、能力は学習や経験、適切な練習によって伸ばせると捉える考え方です。

心理学者キャロル・ドゥエックによって広く知られるようになり、教育やスポーツ指導でも取り上げられています。

能力に対する捉え方は、主に次の2つに整理されます。

  • 固定マインドセット:能力は大きく変わりにくいと捉える
  • 成長マインドセット:能力は学習や経験によって伸ばせると捉える

ここで注意したいのは、固定マインドセットが悪く、成長マインドセットがよいという単純な話ではないことです。

これは人間性を分類するものではなく、能力に対する捉え方の違いです。同じ人でも、技術や状況によって考え方は変わります。

例えば、「フォアハンドは練習すれば伸ばせる」と考えながら、「自分にはバックドライブは向いていない」と感じることもあります。

1. 「できない」と考える理由を確認する

生徒が「自分にはできない」と話したときに、すぐ「練習すればできる」と否定する必要はありません。

できないと感じる背景には、さまざまな理由があります。

  • 十分に練習しても安定しなかった
  • 練習方法が本人に合っていなかった
  • 失敗するところを周囲に見られたくない
  • その技術を習得する目的が分からない
  • 現在は別の技術を優先したい

理由を確認せず、成長マインドセットを押しつけると、生徒の実感と指導者の言葉がかみ合わなくなる可能性があります。

まずは「どこが難しい?」「何を試した?」と聞き、本人が現在の能力をどのように捉えているのかを確認することが大切です。

2. 現在の状態だけで限界を決めない

生徒の考えを受け止めることと、「できないままでよい」と決めつけることは別です。

例えば、バックハンドが安定しない生徒には、次のような声かけが考えられます。

  • 「今は安定していないけど、どこでミスが出るか確認しよう」
  • 「ラケットの角度を変えたらどうなるか試してみよう」
  • 「前回より安定した部分はどこかな?」

「絶対にできる」と断定するのではなく、まだ試していない方法や、変えられる部分に目を向けるようにします。

結果が出なかった場合も、本人の能力だけに原因を求めず、練習方法や課題の難易度を見直します。

3. 努力だけを褒めればよいわけではない

成長マインドセットでは、結果だけでなく、努力や学習の過程にも注目します。

ただし、何度ミスをしても「頑張っていて偉い」と伝えるだけでは、改善につながらない場合があります。

例えば、次のように具体的な変化や工夫を伝えます。

  • 「打球位置を変えようとしていたね」
  • 「さっきよりボールを低く返せるようになったね」
  • 「その方法では難しかったから、次は違う方法を試そう」
  • 「ミスの原因を自分で確認できていたね」

努力の量だけでなく、何を工夫し、何が変わり、次に何を試すのかを確認することが重要です。

4. 他人との比較と自分の成長

初心者と経験者が一緒に練習する部活動では、生徒同士の実力差が大きくなることがあります。

フォア打ちが100回続く生徒と、まだ10回しか続かない生徒を、同じ基準だけで評価すると、成長が見えにくくなる場合があります。

  • 5回から10回続くようになった
  • ボールの軌道が以前より低くなった
  • ミスの原因を考えられるようになった
  • 苦手な技術にも取り組めた

過去の自分との変化を見ることで、本人なりの成長を確認できます。

一方、他人との比較がすべて悪いわけではありません。上級者を目標にしたり、仲間と競ったりすることが意欲につながる生徒もいます。

大切なのは、比較の結果だけで、自分や相手の能力を固定的に決めつけないことです。

画像の説明

5. 卓球指導での活用例

フォア打ち

フォア打ちが続かない場合は、単に回数を増やすのではなく、打球位置、ラケットの角度、打つ強さなどを一つずつ変えます。

変化があったときは、何を変えたことが結果につながったのかを確認します。

ツッツキ

ツッツキが高くなる生徒に「もっと低く」と繰り返すだけでなく、ラケットの角度や力加減を変え、ボールの軌道を比べてもらいます。

低くできなかった場合も、能力不足と決めつけず、別の方法や練習条件を試します。

ゲーム練習

試合で負けたときは、勝敗だけで評価せず、次のように質問します。

  • 「今日うまくいったプレーは何だった?」
  • 「失点が多かったのはどの場面?」
  • 「次の試合では何を一つ変えてみたい?」
  • 「今ある技術の中で使えそうなものは何かな?」

新しい技術を増やすだけでなく、現在持っている技術の使い方を工夫することも成長です。

6. 指導者も生徒を決めつけない

成長マインドセットは、生徒だけでなく指導者にも関係します。

何度伝えても行動が変わらない生徒に対して、「この生徒は何を言っても変わらない」と決めつけると、別の方法を試す機会が減ってしまいます。

そのようなときは、次の点を確認します。

  • 指示は具体的だったか
  • 生徒が行動できない理由を聞いたか
  • 課題の難易度は合っているか
  • 別の伝え方や練習方法を試せないか
  • 周囲の環境が行動を難しくしていないか

もちろん、すべての問題が指導方法の変更だけで解決するわけではありません。

それでも、生徒の性格や能力だけに原因を求めず、指導者側も方法を見直す姿勢が必要です。

7. 成長マインドセットも万能ではない

成長マインドセットを持てば、誰でも同じように成長できるわけではありません。

能力の伸び方には個人差があり、練習時間、指導環境、身体的な特徴、本人の目標などにも影響されます。

また、研究でも、成長マインドセットと成績の関係や、考え方を変える介入の効果は全体として小さく、対象となる生徒や環境によって異なることが示されています。

そのため、次の点に注意が必要です。

  • 「努力すれば必ず成功する」と伝えない
  • できない原因を本人の考え方だけに求めない
  • 努力だけでなく、練習方法や環境も見直す
  • 本人の気持ちを無視して挑戦を強制しない
  • 変えられる部分と現在の制約を整理する

新しい技術に挑戦し続けることだけが成長ではありません。

大会までの期間や本人の目標を考え、今ある得意技を優先して磨くことも、現実的な判断です。これは「能力は伸びない」と決めつける固定マインドセットとは区別して考える必要があります。

まとめ

固定マインドセットと成長マインドセットは、人の良し悪しを分けるものではなく、能力に対する捉え方の違いです。

成長できると考えることは、新しい方法を試すきっかけになります。一方で、努力すれば必ず成功するわけではなく、現在の制約や目標を考えることも必要です。

卓球指導では、成長マインドセットを一方的に教えるのではなく、生徒が自分の能力をどう捉えているのかを確認します。

そのうえで、変えられる可能性、必要な練習、本人の目標や制約を一緒に整理することが大切です。

参考文献

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