【卓球コーチング】初心者と経験者が混在する部活動で、全員が集中できる練習の作り方 | フロー理論
- 公開日
- 2026.11.01
- 更新日
- 2026.10.31
レベル差があると、同じ練習でも集中しにくくなる
中学校の部活動では、卓球を始めたばかりの生徒と、クラブチームなどで経験を積んだ生徒が一緒に練習することがあります。
全員で同じ練習を行うと、初心者には難しすぎ、経験者には簡単すぎる場合があります。
- 初心者はボールが続かず、不安や諦めを感じる
- 経験者は簡単にできてしまい、退屈する
- 経験者に合わせると、初心者が練習についていけない
- 初心者に合わせると、経験者の課題がなくなる
このようなレベル差のある集団で、全員が集中できる練習を考えるときに役立つのが「フロー理論」です。
フロー理論とは?
フロー理論は、心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱された考え方です。
フローとは、目の前の活動に深く集中し、時間を忘れるほど取り組んでいる状態を指します。
フローが生まれやすい条件の一つが、本人が感じる課題の難しさと、自分の技能が釣り合っていることです。
- 課題が簡単すぎると退屈しやすい
- 課題が難しすぎると不安になりやすい
- 少し頑張ればできそうな課題では集中しやすい
ただし、単に難易度を同じにすればよいわけではありません。本人にとって一定の挑戦があり、何を目指すかが明確で、結果を確認できることも重要です。

練習を分けるのではなく、目標を分ける
初心者と経験者で、すべての練習を別々にすると、指導者の負担が大きくなります。
そこで、同じ練習を行いながら、レベルごとに目標を変える方法があります。
例えばフォア打ちなら、次のように設定できます。
初心者
- まずは相手コートに返す
- 5回続ける
- 大きく動かず、一定の姿勢で打つ
中級者
- 20回安定して続ける
- 相手のフォア側へ返す
- 打球後に基本姿勢へ戻る
経験者
- 決めた範囲から外さずに続ける
- ボールの速さや深さを安定させる
- コースを切り替えながらミスを減らす
練習内容は同じでも、取り組む課題が違えば、それぞれに適した難しさを作れます。
回数だけでなく、条件を変える
「初心者は10回、経験者は100回」と回数だけを変えると、経験者には単調な練習になることがあります。
その場合は、次のような条件を加えます。
- 返球するコースを指定する
- ボールの深さを意識する
- 一定のテンポで続ける
- コースを途中で切り替える
- ランダムな返球に対応する
- 得点形式を加える
経験者には、単純に回数を増やすのではなく、判断やコントロールが必要な課題を設定します。
一方、初心者には条件を増やしすぎず、まずは一つの目標に集中できるようにします。
経験者に初心者の相手を任せる場合
経験者が初心者へボールを送る練習も有効ですが、単に「初心者に合わせてあげて」と伝えるだけでは、経験者が退屈することがあります。
その場合は、経験者側にも課題を設定します。
- 初心者が打ちやすい場所へ正確に送る
- 相手の状態に合わせてボールの速さを調整する
- できるだけ同じ回転と深さで返す
- 相手が続けやすい配球を考える
これは初心者のお世話ではなく、ボールのコントロールや相手を見る力を身につける練習です。
経験者側にも練習の目的を説明することで、両方が取り組みやすくなります。
集中できているかを観察する
設定した課題が適切かどうかは、成功回数だけでは判断できません。
指導者は、次のような様子も確認します。
- 自分からもう一度挑戦しているか
- ミスの後も練習を続けているか
- 何を目指しているか理解しているか
- 簡単にできて集中が切れていないか
- 難しすぎて動きが止まっていないか
- 待ち時間が長くなっていないか
ほとんど成功せず、取り組むことをやめているなら、課題が難しすぎる可能性があります。
反対に、簡単に成功し続けて会話が増えているなら、少し条件を加えてもよいでしょう。
全員を同じ状態にする必要はない
同じ練習でも、難しさの感じ方には個人差があります。
経験年数だけでなく、その日の体調、得意な技術、練習相手、本人の自信によっても変わります。
そのため、「初心者」「経験者」という大きな分け方だけでは、適切な課題を設定できないこともあります。
また、全員を常にフロー状態にするのは現実的ではありません。新しい技術を覚えるときには、うまくできずに考える時間も必要です。
フロー理論は、全員を無理に没頭させる方法ではなく、簡単すぎる状態や、難しすぎて取り組めない状態が続いていないかを確認する視点として活用できます。
まとめ
初心者と経験者が混在する部活動では、全員に同じ練習と達成基準を与えるだけでは、集中しにくい生徒が出てきます。
練習内容をすべて分けなくても、回数、コース、判断、返球条件などを変えることで、それぞれに合った課題を設定できます。
大切なのは、指導者が一方的に難易度を決めることではありません。
「この生徒にとって、今の課題は簡単すぎないか、難しすぎないか」
生徒の反応を観察しながら、技能と課題が釣り合う状態を探していくことが、レベル差のある部活動で全員が集中できる練習につながります。