【卓球コーチング】人数が増えると手を抜くのはなぜ?|リンゲルマン効果と集団練習の工夫
- 公開日
- 2026.10.31
- 更新日
- 2026.10.30

部活動やグループレッスンでは、人数が多いほど活気が生まれるように思えます。
一方で、人数が増えることで「誰かがやってくれるだろう」という状態になり、一人ひとりの動きが少なくなることもあります。
このような集団の特徴を考えるうえで参考になるのが「リンゲルマン効果」です。
リンゲルマン効果とは
リンゲルマン効果とは、集団の人数が増えるほど、一人あたりが発揮する力が低下しやすくなる現象です。
フランスの農業工学者マクシミリアン・リンゲルマンは、人が一人または複数人で荷物を押したり引いたりするときの力を調べました。
その結果、人数が増えても、集団全体の力は一人ひとりの力を単純に足した数値にはなりませんでした。
集団の力が低下する原因には、主に次の2つがあります。
- 動きや力を合わせにくいことによる「協調の損失」
- 集団の中で個人の努力が低下する「動機づけの損失」
後者は「社会的手抜き」と呼ばれます。
ただし、人数が増えるたびに、必ず一定の割合で力が低下するわけではありません。

卓球の練習に当てはめて考える
卓球は個人競技ですが、普段の練習は集団で行うことが多いため、リンゲルマン効果の考え方を当てはめられる場面があります。
例えば、次のような場面です。
- 多球練習で、球出しやボール回収を誰かに任せる
- 大人数の練習で待ち時間が長くなる
- 団体戦形式で自分の役割が曖昧になる
- 準備や片づけを一部の選手だけが行う
- 話し合いで一部の選手しか発言しない
本人に悪気がなくても、自分が動かなくても練習が進む環境では、参加意識が下がりやすくなります。
「やる気がない」と決めつけない
集団の中で動かない選手を、すぐに「やる気がない」と判断するのは適切ではありません。
何をすればよいか分からない、ほかの選手に遠慮している、自分が動かなくても困らないと感じているなど、練習の仕組みに原因がある場合もあります。
選手を注意する前に、役割や人数、待ち時間を見直す必要があります。
少人数に分けて役割を明確にする
人数が多い場合は、3人や4人のグループに分けます。
多球練習であれば、次のように役割を決められます。
- 打つ選手
- 球出しをする選手
- ボールを集める選手
- 成功数を記録する選手
一定時間で交代すれば、全員が練習に関わりやすくなります。
準備や片づけでも「みんなでやる」と伝えるだけでなく、誰が何を担当するのかを具体的にします。
個人目標とグループ目標を組み合わせる
グループ全体の目標だけでは、一人ひとりの努力が見えにくくなることがあります。
例えば「グループで100回続ける」という目標に加えて、次のような個人目標を設定します。
- 自分のミスを5回以内にする
- 指定されたコースへ10球入れる
- 球出しのテンポを一定にする
- 練習後に気づいたことを一つ伝える
記録は順位を決めるためだけでなく、前回の自分との比較や練習方法の見直しにも使えます。
一方で、個人目標だけでは仲間への関心が薄くなる可能性があります。全員が一度は作戦を提案するなど、グループ全体で取り組む目標も残します。
指導者が確認したいポイント
選手の動きが悪いときは、次の点を確認します。
- 一人ひとりの役割が分かるか
- 待ち時間が長くなっていないか
- グループの人数が多すぎないか
- 自分の努力が結果につながる内容か
- 個人と全体の両方に目標があるか
声かけだけで改善しようとせず、人数、役割、時間、練習方法を変えることも必要です。
まとめ
リンゲルマン効果は、集団の人数が増えるほど、一人あたりが発揮する力が低下しやすくなる現象です。
卓球の部活動やグループレッスンでも、役割が曖昧だったり、待ち時間が長かったりすると、選手の参加意識が下がる可能性があります。
すぐに本人のやる気の問題と決めつけず、少人数に分ける、役割を明確にする、個人目標とグループ目標を組み合わせるなど、全員が関われる練習をつくることが大切です。
参考文献・参考資料
-
Ringelmann, M.(1913)“Recherches sur les moteurs animés: Travail de l’homme.” Annales de l’Institut National Agronomique, 2e série, Tome XII, 1–40.
-
Ingham, A. G., Levinger, G., Graves, J., & Peckham, V.(1974)“The Ringelmann Effect: Studies of Group Size and Group Performance.” Journal of Experimental Social Psychology, 10(4), 371–384.
https://doi.org/10.1016/0022-1031(74)90033-X -
Kravitz, D. A., & Martin, B.(1986)“Ringelmann Rediscovered: The Original Article.” Journal of Personality and Social Psychology, 50(5), 936–941.
https://doi.org/10.1037/0022-3514.50.5.936 -
Karau, S. J., & Williams, K. D.(1993)“Social Loafing: A Meta-Analytic Review and Theoretical Integration.” Journal of Personality and Social Psychology, 65(4), 681–706.
https://doi.org/10.1037/0022-3514.65.4.681