【卓球コーチング】上達につながる目標設定の方法|生徒のやる気を引き出す指導法
- 公開日
- 2026.10.30
目標設定理論とは?
目標設定理論(Goal-Setting Theory)は、心理学者のエドウィン・ロックとゲイリー・レイサムによって発展した、目標と人の行動・成果の関係を説明する理論です。
一般的に「頑張ろう」という曖昧な目標よりも、具体的で、適度に挑戦しがいのある目標の方が、高い成果につながりやすいとされています。
ただし、目標を設定するだけで成果が出るわけではありません。本人が目標を理解して受け入れていることや、達成に必要な能力・環境が整っていることも重要です。
1. 曖昧な目標より具体的な目標
卓球の練習で、次のような声かけをしたとします。
- 「もっと集中して練習しよう」
- 「フォア打ちを10回連続で成功させよう」
前者は、何をすれば達成できるのかが曖昧です。一方、後者は目指す行動や達成基準が明確になっています。
目標を具体的にすることで、生徒自身が何を意識して練習すればよいのか理解しやすくなります。
2. 目標の難易度を調整する
目標は、具体性だけでなく難易度も重要です。
フォア打ちを30回続けられる生徒に「5回続けよう」と設定しても、十分な挑戦にはならないかもしれません。反対に、まだ3回しか続かない生徒に「100回続けよう」と伝えても、達成の見通しを持ちにくくなります。
生徒の現在の技術に合わせて、少し挑戦が必要な目標を設定することが大切です。
ただし、難しい目標ほどよいとは限りません。新しい技術を習得する段階では、成功回数などの結果より、動作や取り組み方を目標にした方がよい場合もあります。
3. 結果だけでなく行動を目標にする
「試合に必ず勝つ」という目標は、相手の強さなど、自分ではコントロールできない要素にも左右されます。
そこで、次のような行動を目標にする方法があります。
- サーブを出す前に相手の立ち位置を確認する
- レシーブでは相手のラケットの動きをよく見る
- 試合後に、うまくいったプレーを一つ振り返る
自分で実行できる行動を目標にすれば、勝敗だけでなく、取り組み方や成長も確認しやすくなります。
4. 目標設定と振り返りを組み合わせる
目標は、決めるだけで終わらせず、達成状況を振り返ることが大切です。
「フォア打ちを10回連続で成功させる」という目標に対して、実際には7回だったとします。
そのときに「できなかった」で終わるのではなく、なぜ7回でミスをしたのか、次は何を変えるのかを考えます。
目標と実際の結果を比べ、次の行動を調整することが成長につながります。

5. 部活動の生活指導にも活用できる
目標設定理論は、卓球の技術指導だけでなく、部活動の運営にも応用できます。
例えば、集合時間に遅れる生徒に「時間を守りなさい」と伝えるだけでは、目指す状態が曖昧な場合があります。
そこで、次のように具体的な行動基準を共有します。
- 17時までに準備を終え、練習を始められる状態にする
- 担当する卓球台とネットを5分以内に片付ける
ただし、遅刻の原因が授業や移動時間にある場合、目標を明確にするだけでは解決できません。
まず理由を確認し、実行可能な目標を生徒と一緒に考える必要があります。
6. 指導者が気をつけたいこと
目標設定理論を活用するときは、次の点を意識します。
- 生徒の技術や状況に合わせて難易度を調整する
- 生徒が目標の意味を理解し、納得できるようにする
- 達成の有無だけでなく、取り組み方も確認する
- 目標が負担になりすぎていないか観察する
また、数値目標だけに偏ると、フォームやプレーの質よりも数字を優先する可能性があります。
「何のために、その目標を設定するのか」を、指導者自身が明確にしておくことも大切です。
まとめ
目標設定理論では、曖昧な目標よりも、具体的で適度に挑戦しがいのある目標の方が、行動や成果につながりやすいと考えます。
卓球指導でも「頑張ろう」と伝えるだけでなく、何をどの程度できるようになりたいのかを明確にすると、生徒は練習に取り組みやすくなります。
ただし、目標は生徒を管理するためだけのものではありません。
生徒自身が目標を理解し、達成に向けて工夫しながら成長できるようにすることが大切です。
参考文献
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (1990). A Theory of Goal Setting & Task Performance. Prentice Hall.
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a Practically Useful Theory of Goal Setting and Task Motivation: A 35-Year Odyssey. American Psychologist, 57(9), 705–717. https://doi.org/10.1037/0003-066X.57.9.705
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2006). New Directions in Goal-Setting Theory. Current Directions in Psychological Science, 15(5), 265–268. https://doi.org/10.1111/j.1467-8721.2006.00449.x