【卓球の指導】やる気はどう育つ?|自己決定理論で考える3つのポイント
- 公開日
- 2026.10.28
- 更新日
- 2026.10.26
中学校の部活動には、「卓球が強くなりたい」という生徒だけが集まるわけではありません。
友達に誘われた、入りやすそうだったなど、入部理由はさまざまです。そのような生徒に最初から高い意欲を求めても、すぐにやる気が生まれるとは限りません。
今回は「自己決定理論」をもとに、卓球の指導でやる気を育てる方法を考えます。
自己決定理論とは
自己決定理論は、心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンらが発展させた、動機づけに関する理論です。
この理論では、次の3つの心理的欲求が重視されています。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| 自律性 | 自分で選び、納得して取り組む感覚 |
| 有能感 | できるようになったと感じること |
| 関係性 | 仲間や指導者とのつながりを感じること |
卓球の技術だけでなく、この3つを満たしやすい環境をつくることが、自発的な取り組みにつながります。

自律性|自分で決める機会をつくる
自律性を尊重することは、好きなことだけを自由にさせることではありません。
指導者が練習の枠組みを示したうえで、生徒が選べる部分をつくります。
- フォアとバックのどちらから練習するか選ぶ
- 練習したいサービスを選ぶ
- 今日の目標を自分で決める
- ゲームで試す作戦を考える
初心者にすべてを任せても、何を選べばよいか分からないことがあります。最初は二つほど選択肢を用意し、少しずつ自分で考える範囲を広げます。
有能感|小さな上達を実感させる
やる気がないように見えても、実際には「どうせできない」と感じている場合があります。
そこで、達成しやすい小さな課題を設定します。
- フォア打ちを10回続ける
- サービスを決めた場所へ3球入れる
- 前回よりラリーを1回多く続ける
- 打球後に基本姿勢へ戻る
上手な選手と比較するのではなく、以前の本人から何が変わったかを伝えます。
「前より続くようになった」「今の戻りは早かった」と具体的に伝えることで、上達を実感しやすくなります。
関係性|安心して参加できる環境をつくる
友達がいることは、部活動を続けるきっかけになります。
しかし、仲のよい生徒だけで組ませ続けると、グループに入りにくい生徒が出てくる可能性があります。
- 指導者が一人ひとりに声をかける
- ペアを定期的に入れ替える
- ミスを責めない雰囲気をつくる
- 技術差があっても役割を持てる練習を行う
関係性は、仲のよい友達がいることだけではありません。「ここにいてよい」「困ったときに助けてもらえる」と感じられる環境も大切です。
最初から自発的でなくてもよい
入部したばかりの生徒が、最初から練習の意味を理解しているとは限りません。
初めは、
- 周りがやっているから取り組む
- 指導者に言われたから動く
- 部活動の決まりだから参加する
という段階でもよいでしょう。
練習を続ける中で、できることが増え、人とのつながりが生まれると、「言われたからやる」から「自分に必要だからやる」へ変わる可能性があります。
選ばせればよいわけではない
自己決定を尊重することは、指導をしないことではありません。
「好きに練習してよい」と任せるだけでは、動けない生徒もいます。
- 取り組む目的を説明する
- 達成できる課題を用意する
- 必要な場面では具体的に指示する
- 慣れてきたら選択肢を増やす
- 最終的に自分で判断できるようにする
生徒の経験や意欲に合わせて、指示する範囲と任せる範囲を変えることが必要です。
やる気が見えない生徒には個別に対応する
練習していないように見えても、理由は一人ずつ異なります。
- 練習が難しくて諦めている
- 何をすればよいか分からない
- 周囲との関係に不安がある
- 失敗を見られるのが恥ずかしい
- そもそも目的を見つけられていない
まず本人の話を聞き、自律性・有能感・関係性のどこでつまずいているのかを考えます。
全員に同じ声かけをするよりも、理由に合わせて対応することが重要です。
指導現場での取り入れ方
練習前には、目的と選択肢を伝えます。
今日はサービスから3球目までを練習します。最後の10分は、自分が試したいサービスを選んでください。
練習中は、具体的な変化を伝えます。
さっきより打球後の戻りが早くなっているよ。
練習後には、本人に振り返ってもらいます。
今日できるようになったことと、次に練習したいことは何?
こうした小さな関わりが、自分で考えて取り組む力につながります。
まとめ
自己決定理論では、やる気を育てるために次の3つが重視されています。
- 自律性: 自分で選び、納得して取り組める
- 有能感: 上達や達成を実感できる
- 関係性: 仲間や指導者とのつながりを感じられる
中学校の部活動では、最初から目的意識が高い生徒ばかりではありません。
まず指導者が練習の枠組みを示し、小さな成功と安心できる関係を積み重ねながら、少しずつ自分で選ぶ範囲を広げます。
やる気を本人だけの問題にせず、やる気が育ちやすい環境をつくることも指導の一部です。
参考
- Self-Determination Theory
https://selfdeterminationtheory.org/theory/ - Ryan, R. M. & Deci, E. L.(2000)Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being
https://selfdeterminationtheory.org/SDT/documents/2000_RyanDeci_SDT.pdf